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スチールバイクをオーダーしたことはあるかい?(納車編)

WRITTEN BY川ちゅん blog

オーダーフレームは時間がかかる。

頭では、理屈ではわかっていても、
実際自分が当事者となると、その「時間がかかる」という言葉の真の意味をわからされることになる。

ビルダーさんもただ手をこまねいているわけではなくて、
できる限り納期を早くするために、部材を絞った「セミオーダー」が存在する。

定番のスチールチューブに、定番のジオメトリを用意し、最大公約数的に良好な商品を早く、比較的廉価に提供できるものだ。
もっとも、そのセミオーダーは「納期」よりも「価格」にスポットライトが当たりがちではあるが……

私が注文した内容はフルオーダーもいいところで、
チューブの選定からこちらのリクエストを通したものだから、当然納期が長くなることはわかっていた。

が、2020年の3月頃から風向きはずいぶんと変わってしまう。

そう、新型コロナウィルスによる世界的なパンデミックが起きてしまう。

レースの中止だけでなく、工場の稼働の停止などもあり、
どうやらイタリア本国のコロンバスの工場もロックダウンの影響で稼働停止に。
1月頭に発注した割にはパンデミックによるロックダウンまで、ずいぶん時間差があるなとは思い、何をやっていたんだとツッコミたいところだが、チューブが届かない、本国担当者にも連絡がつかないというのは事実。

与えられた選択肢はそう多くない……つまり、ただ、ジッと待つしかない。

そうして待つことさらに3か月、2020年6月の末頃、東洋フレームの担当者から連絡が届く。

コロンバスの工場が再稼働し、CENTOの最終出荷のチューブが発送されたという連絡だ。
順当に部材届いて、フレームが組み上がるのは7月の末ごろになりそうだいう見通しに。

それに合わせて、塗装の打ち合わせをスタート。
いくつかのカラースキームを考案し、現実的に良さそうな案を絞り、見積もりを取った。

インスタなどを参考に、全体をつかってダイナミックに色分けした

ちなみに確定したカラースキームは、1976~77年ごろにスポーツカーレースで活躍した
西ドイツ・クレーマーレーシングのポルシェをイメージしたもの。
これは田宮のラジコンやプラモデルで有名かもしれない。

こちらはポルシェ935K2、ウィッティントン兄弟によるル・マン制覇が有名な車だ

ちなみにこのポルシェのドライバーだったボブ・ウォレック選手は個人的にファンだった往年の名ドライバー。
こうした好きなカラーリングをオーダーできるのは、オーダーフレームの醍醐味だ。

色数が増えるとその分塗装代金もかさんでしまうので、ある程度シンプルにまとめつつの4色塗分け。
細かい部分はフレームが組み上がってから、再び大阪・柏原の工場で直接打ち合わせることにした。

そしてここは予定通り7月の半ば、フレームが組み上がり2回目の柏原市の工場訪問。
真鍮ロウのフィレットブレイズで組み上がったニューバイクの作りに早速感動。
塗装のストライプの角度や太さ、塗分け処理や墨入れのリクエストなどを、現物のディテールを確認しながら進めていく。

カラー見本と合わせながら色を選定する、インクごとに若干金額も異なるようだ
実際のデカールとフレームのスケルトンを確認して、位置決めもする

かなり細かいリクエストを送ってしまったが、そうそう何度もオーダーするものではないので
ここは妥協せず、面倒くさがらず、わかってもらえるように担当者へ伝えた。

塗装はもちろん国内工場。
そして「竹之内 悠 選手」と同じ工房で塗装してほしいとリクエストを送った。
かなり細かいリクエストがあるので、おそらく1か月以上はかかってしまうだろうというレスポンス。
8月末か9月頃の仕上がりになるだろうということで、塗装見積もりを待つことになった。

だが、ここでも事態がおかしなことになる。

9月の中頃、10月になっても連絡がない……
これまでの納期の遅れを考えれば、慌てるようなものではないのだが、
担当者へどういう事か連絡をすると、選択した塗料関係の準備に時間がかかっているとのこと。
一応の見積もりは出たので、いったん代金を支払い、とにかくは施工を進めてもらうことにした。

11月、12月……最初の注文から1年が経過したが、完成の連絡は来ない。

ふたたび担当へ連絡をするが、今度はどういうわけだか返信がない。
嫌な予感がして、担当者の電話へ直接電話をかけるが、つながらない……
よくよく見ると東洋フレームのサイトはいつの間にか工事中になっており、トップページしか残っていない。
しかも、インスタグラムでは、工場の傍らにあった倉庫のコンテナや資材を整理したり売却しているストーリーが公開されている……

東洋フレーム、潰れるんじゃ……

最悪の事態が脳裏によぎるが、かといってここまできて、自分にできることはあまりない。
待って、待って、信じて待つしかない。

年が明けて、2021年、もはや考えれば考える程やるせなくなってしまい、
あまり意識しないように考えていた2月初旬……とうとう東洋フレームから完成の連絡が!!

しかし、いつものオーダー担当者ではなく、自分のシクロクロスレースの相談など担当してくれているTさんからの連絡だ。
すこし、引っかかることもなくもなかったが、とにかくフレームは完成した、取りに行くしかない!
私は大阪・柏原の工場へ3回目の訪問をし、フレームを直接工場にて受け取った。

最初の相談から完成まで約15か月……長い、とにかく長いオーダーだった……

出来上がった感想、念願のフレームとの対面、出てくる言葉はただ、ただ「な、長かった……」という感想のみ。

グリーンのところは「キャンディ・ライトティール」という色に仕上げた

ピアッツァのトランクにフレームを押し込み、東名高速の帰り道、どういう風に組もうとか、このバイクでどこへ行こうというよりも「ここまで本当に長かった…」「東洋フレームがつぶれなくてよかった…」という安堵と
脱力感で満たされていた

組み上げるパーツはアルテグラDi2、もう半年以上前に買って揃えてはいたが、細かいパーツはまだこれから。
しかし、とにかく、今はこの心配と不安から解消された安寧をたゆたっていたいと思うのだった……

刻印にはスミ入れ加工をしていただいた

(つづきます)

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